入力データが AI の学習に使われるサービス一覧(13サービス横断)
「入力したデータが学習に使われるか」は、各社の規約と設定画面を突き合わせないと分からない。しかも同じ会社の同じブランドでも、消費者向けアプリと API で判定が真逆になる。SpecAtlas が追跡する13サービスについて、その判定を1枚に集約したのがこのページである。
AI / LLM サービス
| サービス | 値 | 条件 | 出典 | 確認日 |
|---|---|---|---|---|
| ChatGPT | 条件付き | Free / Plus は既定でオプトイン(設定から無効化可)。Team / Enterprise / Edu は既定で学習に使用されない。 | How your data is used to improve model performance | 2026-07-23 |
| Claude | 条件付き | Consumer Terms(2025-10-08 発効)では既定オプトイン。アカウント設定でオプトアウトしない限り、会話はモデル学習を含むサービス改善に使用され得る。なおオプトアウトしても、フィードバック送信分と安全性レビューでフラグが立った分は使用され得る。別製品の Anthropic API は顧客コンテンツを学習に使用しない。 | Anthropic Consumer Terms of Service | 2026-07-23 |
| Gemini | 条件付き | 消費者向け無料版は既定オプトイン(Gemini アプリアクティビティを無効化すれば停止できる)。Workspace の有料版は学習に使用されない。 | Gemini Apps Privacy Hub | 2026-07-23 |
| GitHub Copilot | 条件付き | Free / Pro / Pro+ はオプトアウトしない限り学習に使用され得る。Business / Enterprise は学習に使用されない。 | GitHub Copilot Trust Center | 2026-07-23 |
| Perplexity | 条件付き | API は第2.3.3条で、顧客コンテンツを生成 AI モデルの学習・再学習・ファインチューニング等に使用しないと明記している。消費者向け規約には学習に関する条項が存在せず、コンテンツライセンス(第6.4.2条)がサービスの改善を目的に含むのみで、規約本文からは可否を判断できない。 | Perplexity API Terms of Service | 2026-08-02 |
API / 開発者向けプラットフォーム
| サービス | 値 | 条件 | 出典 | 確認日 |
|---|---|---|---|---|
| Anthropic API | 不可 | Commercial Terms により、Anthropic は本サービス経由の顧客コンテンツをモデル学習に使用しない。消費者向け Claude が「既定オプトイン」なのとは逆であり、混同しないこと。 | Anthropic Commercial Terms of Service | 2026-07-23 |
| Google Gemini API | 条件付き | 無料枠の入出力は、機械学習を含む Google のプロダクト改善に使用される。人手によるレビュー・注釈が入る場合もある。有料枠はプロンプトも応答も学習に使用されず、禁止用途ポリシー違反の検出と法令遵守のためにのみログ保持される。なお EEA・スイス・英国のユーザーに API クライアントを提供する場合は有料版の利用が必須。 | Gemini API Additional Terms | 2026-07-23 |
| Groq | 不可 | Services Agreement により、Groq は顧客の許可または指示がない限り、入力・出力を AI モデルの学習やファインチューニングに使用できない。入出力へのアクセス自体も、サービス提供・法令遵守・安定運用・AUP 遵守の確認に必要な範囲に限定される。対象顧客はコンソールでゼロデータ保持を有効化でき、この場合は安定運用・AUP 確認目的のアクセスも遮断される。 | Groq Services Agreement(GroqCloud / API を規律する契約) | 2026-07-23 |
| Hugging Face | 条件付き | Hugging Face 自身は学習目的でユーザーデータを保存せず、Inference Providers 経由のリクエストではリクエストボディもレスポンスも保存しない(デバッグ用ログは最大30日、ユーザーデータとトークンは含まない)。ただし Inference Providers は外部の推論事業者へルーティングする仕組みであり、ルーティング先の事業者のデータ方針は別に適用される。実際にどう扱われるかは選択したプロバイダ次第。 | Inference Providers — Security & Compliance | 2026-07-24 |
| Mistral AI | 条件付き | 有料契約の顧客データと出力は学習に使用されない。ただし無料サブスクリプション(および Vibe Pro / Vibe Teams)はオプトアウトしない限り学習に使用される。Labs 系モデルはゼロデータ保持を有効化しない限り学習対象。無料枠で試して本番も同条件だと考えないこと。 | Mistral AI Commercial Terms of Service | 2026-07-23 |
| OpenAI API | 不可 | 顧客が明示的にオプトインしない限り、API に送信したデータは OpenAI のモデル学習に使用されない。ただし不正利用監視のログは最大30日間保持される。Zero Data Retention を適用すればこのログからも除外できるが、OpenAI の事前承認が必要。 | API Data Usage Policies | 2026-07-23 |
| Replicate | 不可 | Replicate 自身のモデル学習には使用されない。規約 5.2 に「train and generate Customer Derivative Models」とあるため学習に使われると読み違えやすいが、Customer Derivative Model は定義上「顧客が本サービス上でファウンデーションモデルを自分の入力でファインチューニングしたモデル」であり、顧客自身の学習ジョブを指す。ただし Resultant Data(利用状況を反映した情報)は Customer Data の定義から除外されており、Replicate 側に帰属する。 | Replicate Terms of Service | 2026-07-24 |
| xAI (Grok API) | 不可 | Enterprise 規約では、xAI は User Content をファウンデーションモデル・大規模言語モデル等の学習に使用しない。API データは学習に使われず30日後に自動削除される。ただし xAI は非識別化・集計データを作成でき、それは xAI に帰属し任意の適法目的に利用され得る。X 上の消費者向け Grok は別規約で、利用者が学習利用の可否を選択する形になっている。 | xAI Terms of Service - Enterprise(API を規律する契約) | 2026-07-23 |
解説と実務上の注意
最も多い誤解:「同じブランドなら同じ扱い」
横断で並べると、このデータで一番はっきり出るのはブランド内の分裂である。
| ブランド | 消費者向け | API / 法人向け |
|---|---|---|
| Anthropic | Claude は既定オプトイン | Anthropic API は使用しない |
| OpenAI | ChatGPT の Free / Plus は既定オプトイン | OpenAI API は使用しない |
| Gemini アプリ無料版は既定オプトイン | Gemini API は無料枠のみ使用する | |
| xAI | X 上の Grok は利用者が選択 | Enterprise 規約では使用しない |
| Perplexity | 規約に学習の条項が存在しない | API は使用しないと明記 |
「Claude は学習に使うらしいから業務では使えない」は、Anthropic API については誤りである。逆に「API だから安全」も、Gemini API の無料枠については誤りになる。判定はブランドではなく契約単位で決まる。
「API なら安全」が成立しない唯一の例外
追跡している API プラットフォーム5社のうち、入力を学習に使うことがあるのは Google の Gemini API だけである。しかも無料枠に限られる。
- OpenAI API / Anthropic API / Groq / xAI(Enterprise) — 学習に使用しない
- Mistral — 有料は使用しない、無料サブスクリプションはオプトアウトしない限り使用する
- Gemini API — 無料枠は使用する。人手によるレビュー・注釈が入る場合もある。有料枠は使用しない
Gemini API の無料枠は「人が読む可能性がある」と明記されている点で、他のどれとも性質が違う。評価フェーズで無料枠に本番相当のデータを流すのは、この一点だけで避けるべきである。なお EEA・スイス・英国のユーザーに API クライアントを提供する場合は、そもそも有料版の利用が必須になっている。
無料と有料の断層は Mistral にもある
Mistral も同じ構造で、有料契約は学習に使用しないが、無料サブスクリプションはオプトアウトしない限り使用する。Vibe Pro / Vibe Teams も無料枠側の扱いになる。さらに Labs 系モデルはゼロデータ保持を有効にしない限り学習対象である。
Gemini API と Mistral に共通するのは、無料枠で検証して「学習には使われない」と結論し、そのまま本番も同条件だと考えてしまうという失敗の形である。無料枠の判定は、有料に移行するまで有効ではない。
「使用しない」の中身も一律ではない
判定が no の5社も、実際の保持期間と例外は異なる。
- OpenAI API — 学習には使わないが、不正利用監視のログを最大30日保持。Zero Data Retention で除外できるがOpenAI の事前承認が必要
- xAI — 学習に使わず30日後に自動削除。ただし非識別化・集計データは xAI に帰属し、任意の適法目的に使える
- Groq — 入出力へのアクセス自体が必要最小限に限定される。対象顧客はゼロデータ保持を有効化でき、その場合は運用目的のアクセスも遮断される
- Anthropic API — Commercial Terms により顧客コンテンツを学習に使用しない
- Replicate — Replicate 自身の学習には使われない。ただし規約5.2条の「train and generate Customer Derivative Models」は顧客自身のファインチューニングを指す定義であり、学習に使われると読み違えやすい
同じ no でも、Groq のようにアクセス権限まで絞っている契約と、ログ保持が既定で残る契約では意味が違う。 秘匿性の高いデータを扱うなら、判定だけでなくゼロデータ保持の可否まで見る必要がある。
オプトアウトしても残るもの
Claude の消費者向け規約には見落とされやすい但し書きがある。オプトアウトしても、フィードバックとして送信した会話と、安全性レビューでフラグが立った会話は使用され得る。 「オプトアウトしたから一切使われない」わけではない。
GitHub Copilot も Free / Pro / Pro+ はオプトアウトしない限り使用され得る一方、Business / Enterprise は使用されない。個人契約のまま業務コードを書いている状態が、最も気付かれにくい形である。
条項そのものが無い場合:Perplexity
Perplexity は他の12社と性質が違う。消費者向けの利用規約には、学習に関する条項が1つも存在しない。「使う」とも「使わない」とも書かれていない。あるのはコンテンツライセンス(第6.4.2条)が「サービスを運営し、改善し、宣伝し、提供するため」と述べている部分だけである。
一方 API 規約は明確である。
Perplexity は、顧客コンテンツを生成 AI モデルの学習・再学習・ファインチューニング・その他の改善に使用しない(第三者に使用させることもしない)。(第2.3.3条)
「規約に書いていない」を「使われない」と読んではいけない。 明記されていない以上、規約本文からは可否を判断できないというのが正確な状態である。学習に使われては困るデータを扱うなら、明記されている側、すなわち API を選ぶのが確実である。
なお消費者向け Perplexity は、そもそも規約上個人的・非商用の利用に限定されている。業務データを流すこと自体が想定されていない。
判定が消えるケース:Hugging Face
Hugging Face は Inference Providers 経由のリクエストについて、リクエストボディもレスポンスも保存せず学習にも使わないと明記している。しかしこの仕組みは外部の推論事業者へルーティングするもので、ルーティング先の方針が別に適用される。自社が「使わない」と言っていることと、データが実際に届く先が「使わない」ことは別である。
確認する順序
- いま自分が使っているのは消費者向けか API か(同じブランドでも真逆)
- 無料枠のままか(Gemini API と Mistral は無料と有料で判定が変わる)
- 個人契約で業務データを流していないか(Copilot、ChatGPT)
noのサービスでも、ログ保持とゼロデータ保持の条件- 推論のルーティング先が別事業者になっていないか(Hugging Face)
- そもそも規約に学習の条項があるか。 無いことは「使われない」ではない(Perplexity)